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【書評】中町信『模倣の殺意』を読んでみた!【読者への挑戦付き元祖〇〇トリックミステリ】

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こんにちは、あべし(@honjituno)です。

今日はおすすめミステリー小説のレビュー記事です!

 

中町信『模倣の殺意』を読んでみました!

あるトリックの先駆けとなった作品。知られざる名作というのはきっとこういう作品のことをいうのかと思った一冊!

七月七日午後七時。新進作家・坂井正夫が青酸カリの服毒死を遂げた。

 

遺書もなく、世間的には自殺として処理された。

 

事件に疑問を抱いた二人の男女。それぞれが事件の真相を解明すべく調査を始める。

 

果たして坂井の死は本当に自殺なのか…。他殺だとしたら一体誰が…。

 

今回もおすすめポイントを紹介しつつ、ネタバレなしでレビュー記事を書こうと思います! 

 

※YouTube動画でも紹介しています!合わせてどうぞ!


【中町信】『模倣の殺意』をネタバレなしで紹介します!【時代に埋もれた名作/書評】

【書評】中町信『模倣の殺意』を読んでみた!【読者への挑戦付き元祖〇〇トリックミステリ】

今回は中町信『模倣の殺意』を読んでみました!

 

まずはいつも通り内容紹介をしていきます!

『模倣の殺意』概要紹介!

七月七日の午後七時、新進作家、坂井正夫が青酸カリによる服毒死を遂げた。遺書はなかったが、世を儚んでの自殺として処理された。

 

坂井に編集雑務を頼んでいた医学書系の出版社に勤める中田秋子は、彼の部屋で偶然行きあわせた遠賀野律子の存在が気になり、独自に調査を始める。

 

一方、ルポライターの津久見伸助は、同人誌仲間だった坂井の死を記事にするよう雑誌社から依頼され、調べを進める内に、坂井がようやくの思いで発表にこぎつけた受賞後第一作が、さる有名作家の短編の盗作である疑惑が持ち上がり、坂井と確執のあった編集者、柳沢邦夫を追及していく。

 

著者が絶対の自信を持って読者に仕掛ける超絶のトリック。

という感じのストーリーだよ! 

1970年代に書かれていた時代に埋もれた名作!

今回紹介するのは中町信『模倣の殺意』です。

 

著者の中町信という名前を聞いても、知らないという方が多いハズ!

 

ですが!この『模倣の殺人』は時代に埋もれてしまった名作といわれている作品なのです!

 

本作は実は1972年に発表された作品!最初は『新人賞殺人事件』というタイトルで発表されましたが、改稿・改題をへて現在創元推理文庫から出版されているものが決定版となっています。

 

埋もれてしまった理由は戦後の社会派推理小説ブームの影響です。

 

トリックが主体のミステリーだと当時は流行らなかったのかもしれませんね。

 

そして、清張の社会派ミステリー(トラベルミステリー?)の影響か、地名や駅名が多く登場していたように感じました。

 

本作は近年再評価されていて、数年おきにブームが訪れるロングセラー作品となっています!

言葉遣いや物価など時代を感じさせる描写も多かったけど、度重なる改稿のおかげかそこまで違和感はなく、今読んでも普通に楽しめました!

〇〇トリックの元祖!

本作で最も衝撃を受けるポイントがこの『〇〇トリック』です!

 

すでに多くの書評で明かされてしまっていますが、この記事の方針はネタバレ厳禁!

 

トリックの種類を明かすことでネタバレになってしまう危険性がありますので、詳細は書きません!

 

このトリックを使った作品は1990年前後の新本格ブームでじゃんじゃん発表されることになりますが、それよりおよそ20年早く書かれていた事実にとても驚きました。

 

日本の推理小説史にとっても重要な記念碑的作品なのです。

〇〇トリックに加えて『読者への挑戦状』も付いてるよ!いったんページを閉じて事件の真相を推理してみよう!

そんなのあり!?の衝撃のラスト!

本作を読むまでに〇〇トリックミステリーをたくさん読んできた方は、トリック部分に関しては見抜けるかもしれません。

 

読者への挑戦状があったのであれこれ推理してみたものの、事件の真相には全く届きませんでした…。

 

よくミステリー小説の感想で『そんなのあり?』というものをよく見かけますが、一字一句間違うことなく同じ感想でした。

 

真相に気がついた時に『そんなのあり!?』と口にしていることでしょう笑。

 

ただ、〇〇トリックということで『自分が今何について騙されているのか』が分かりにくく、行ったり戻ったりを何度か繰り返しようやく理解できました。

 

なんとなく物語の前提を覆されてしまった気がして一瞬冷めてしまったのですが、その先に待ち構えていた衝撃の真相に気がついた時…。

 

本作のラストは全身鳥肌案件です。ラストの衝撃に耐えきれず、読後は終始呆然としてしまったのでした…。

ネタバレ厳禁でとても分かりにくい書評になってしまいました!すみません!でも、この作品を発掘してくれた方に全力で感謝申し上げたいです!ありがとうございました!

まとめ

中町信『模倣の殺意』をレビューしてみました!

 

1970年代に書かれた元祖〇〇トリックミステリー!当時は社会派ミステリー全盛期で時代の波に埋もれてしまったものの、近年ブームを起こしている人気作です!

 

新本格ブームのトリックがここに端を発していると思うと感慨深いですね。ミステリー好きな方はもちろん、ラストで『そんなのあり!?』と言ってみたい方はぜひ手に取ってみて下さい!

中町信さん『殺意シリーズ』の順番についてもまとめています!ぜひ合わせてチェックしてみてください!それではー!

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